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スティルライフ『夜のカタログ』

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全10曲
トレーシングペーパーのカバー付き大判紙ジャケット
8ページブックレット

アートワーク:富田惠子(銅版画)+川本要(デザイン)
マスタリング:庄司広光(皿disc)
ライナーノーツ:福島恵一(音楽批評)

レーベル:THE ETHNORTH GALLERY
発売日:2014年12月3日
価格:2,400円(税抜)


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「夜のカタログ」について

山を見て、美しいということがあるでしょう。尾根の繋がりを、木々の作り出す濃淡を、わき出すような霧の動きを見て面白いなと思う。やがて注意深くなり、周囲の台地と麓の継ぎ目を探したり、稜線の角度の違いに気がついたりして、改めて、地中からのエネルギーを受け止め、大地が不思議な均衡を得るに至った経緯を想像してみたりする。またこうした線や形と、そこに落とされる光と影から、ダイナミックな力動を体感的に覚えて、自分もまた日常を、複雑にかかる力の中でぎりぎりのバランスを保ちながら存在しているということが、わかる。

山に入り、今度は目を閉じて、そして耳を澄ましてみる。風に揺れる木々の音、雨の当たる音、虫や鳥や、生き物の鳴く声。いい音が聞こえてきますね。そこでスティルライフの二人はポンと手を打つ。木を叩く。筒を吹く。それを録音して、我々が聞かせてもらう。彼等が何故そのようなことをしたかといえば、わかったからではないでしょうか。山の振動を。山の無限に凹凸する表面が振動する様を、彼等の体が理解した。この感じは知っている、普段気には留めないけれど、いつも感じていた、音の由来。そのようにすみやかに。

こうした類の世界の把握というものは、知識に基づくそれとは一寸違って、証明するのが難しい。まあ、そうする必要も無いのかもしれないが。その人個人の幸福は、閉じたものであっていっこうに構わないのですから。手を打つ。木を叩く。筒を吹く、そうこの感じ、山の音もまた同じ。でも、それは教えるようなもんじゃない。

このCDを聞いて驚くのは、どんなものでも作品というものが持つ気負った印象を全く受けない、ということでした。音は立派なものです。木立の立てる音や虫の声をここまでブーストして、なおかつ耳になじむ状態で鳴らされているものを私は知りません。ですから、環境録音(の作品)としては十分成り立っています。そして同時に思うのは、これは与えられたものではないということ。聞いてくれ、とはいわない。作品がまとううっとうしさ、禍々しさと無縁の、なんでしょう、音ですね。芸術というのは、それを作った人の、理解の過程でたまたま産み落とされて、見聞きする人には、また別の理解への入り口として機能する。そのような有り難い印象を持ちました。

AMEPHONE

























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# by hofli_works | 2014-10-30 10:05 | スティルライフの作品