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TAKASHI TSUDA / hofli WEB SITE

hoflisound.exblog.jp

hofli 『雑木林と流星群』

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2012年リリース、hofli名義での最新作。

2011年秋から録音にとりかかり、冬のあいだ毎朝、天候や風向の具合、部屋の温度と湿度を確かめ、灯台守が日誌をつけるような気持ちで制作しました。
2002年発表の『Biometeor』収録の「rittoh」のアイデア、すなわち「サウンドスケープを下地に演奏し、そこからベーシックとなった音のトラックを引き算する」という手法で制作したアルバムで、音源がひととおり完成したのは春先。必然的に、秋から冬にかけての気配を感じさせる曲が並びました。

各地での演奏や様々なセッション、ワークショップなど、ここ数年の私の音の旅をふまえた、まぎれもなく現在の私の作品になったと思っています。

マスタリングはいつものように庄司広光氏にお願いし、ライナーノート執筆を「のみの音楽舎」藤井友行氏に依頼。パッケージのデザインを含め、アートワークのすべてを『水の記憶』に引き続きdrop aroundの青山夫妻に仕上げていただきました。制作開始からおよそ1年、その前半は音楽家として、後半はプロデューサーとして仕事をしたことになります。

私の拙いアイデアや思いつきを完成に導いてくれた各氏に感謝いたします。

お取り扱い店舗情報は、こちらからご覧ください。

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hofli 雑木林と流星群

収録曲

01: サワグルミの林で
02: 秋雨と水筒
03: ブランケット
04: 空を往く舟
05: 立冬
06: 暖炉と霜柱
07: コッホ雪片

[total playing time: 52:35]

型番 hoflicd 11 
販売価格 2,100円(税込)

PNdB-atelier
http://hoflisound.exblog.jp/
ⓒⓟ2012 hofli / Takashi Tsuda

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hofli『雑木林と流星群』制作ノート


01: サワグルミの林で

タイトルは「サワグルミの林で」だが、実際にはうちの前のお屋敷の椎の樹が間欠的に落とすドングリの音を聴きながら構想した曲。ドングリの落ちるリズムは、ランダムなようでいて気温や湿度とも関わるリズムがあるのだろう。秋から冬へ、波のように季節は行きつ戻りつする。そのリズムが、おそらくドングリのリズムの下地になっているはずだ。最後のリフレインにK.O.のハミングを重ねたが、しっくりこなかった。理由は、その作業が「足し算」だからだと気付いたのは、ずっと後になってからだった。ところで、なぜタイトルは「サワグルミの林で」なのか。ツアー先で見た、ぼたぼたとクルミの実が落ちる場面の印象があまりに強く、いつのまにかイメージがすっかりドングリからすり替わってしまったようなのである。


02: 秋雨と水筒

フィールドレコーディング素材をもとにmax/mspによるプロセシングで作った曲。これまでもよくやってきた手法だが、いつもはもともとの音素材をどこかで使うようにしていたが、この曲では、もともとの素材となった音をすべて削除した。ひとつだけ種明かししておく、学校帰りの子供が空き缶を蹴っ飛ばす音をプロセスした。これまでmspを使った曲は、平均率ではなく、たとえば60Hzの倍音律にしていたりしたが(そうすることでしか出せない音色がある)、靄のかかったような風景には平均律をもとに揺らぎを作り出した方がしっくりくるように思えた(そういえばケージもイーノも純正律を嫌っていたらしいが、純正律の濁りのなさも、平均律の濁りも、それぞれ表現として意識すれば面白いものだ)。引き算によって、具体的な場面は想起できなくなり、かわりに季節の気配と気分だけが濃厚に残った。


03: ブランケット

屋根を修理する音が風に乗って聴こえてくる様子が面白くて録音してあった。この面白さは、木槌が板を打ち付けた反動が手に伝わって跳ね返り、また重力に従って木槌を振り下ろして、、という身体的なリズムの感触が音で伝わってくること。そして、この槌音のランダムさと、風による位相の変化。これをベーシックトラックとしてクリックのような役割で利用し、最終的にそれを削除した。聴こえてくるのはスティールパンの音だが、再生速度は落としている。


04: 空を往く舟

オートハープとディレイ二台だけで作った。この曲の原型は、友人のリトルブック・プレス「prelibri」の2012年4月に行われた展示のために依頼されて作った「sounds for 15 minutes snooze」とおなじものである。LR2chに一発録りしたもともとの長尺演奏の別の部分を、ほぼそのまま切り出したのだ。この演奏は、ジェット機の揺らぐ音が上空から降ってくるのにヒントを得て、エフェクトの掛け方を工夫した(コーラスやフランジャーは使わずに演奏中にディレイを微調整した)もので、そういう意味では、これもサウンドスケープを「引き算」する手法でこしらえた曲だと言える。


05: 立冬

そもそもの「引き算音楽」というアイデアを構想した原点とも言える曲で、この曲だけ2002年に既発表、CD-R『Biometeor』に収録されている。まだ『游音』をやっていたころ、まだラップトップでの演奏をメインにする前。思えばずいぶん昔だ。家の近所で録音したサウンドスケープ、善福寺川沿いの公園へと向かう路地、空にケヤキのシルエットがのびていて、冬を告げるジョウビタキが鳴いていて、落ち葉が地面を転がる音がして、遠くで犬が鳴いていて、、、そんな情景をベーシックトラックにして、風景と対話するかのようにギターを弾き、なにかのフィードバック音や手近にあったものの音などで冬の始まりの日の情景をなぞっていき、最終的にベーシックトラックを消去したのだった。そういえば、この曲ではじめて、今よく弾いているGretchを使ったんだっけ。


06: 暖炉と霜柱

Tene-Guitのアコーディオン奏者・一柳敦子さんが、よくライブ前に自身を落ち着けるために、アコーディオンで深い寝息のような音を鳴らしていた。彼女が使うアコーディオンはFADOの伴奏に使われるポルトガル製のものだそうだ。FADOでは歌手のコブシを邪魔しないようにアコーディオンのリードはビビリがないように調律されている。そのため音色も笙のように澄んだものだ。この曲では「干渉音」が興味の対象となっている。我が家の古い冷蔵庫のうなりが酷く、ギターを弾くと干渉して別の倍音が聴こえる。それがとても面白かったので干渉音が聴こえやすいコードをいくつか見つけて組み立て、リフを作って遊んでいた。それを土台にして別のアルペジオやコードを思いつき、ある日、一柳さんを呼び出して録音することにした。あらかじめ土台になるリフに合う音を選んでもらい、ゆっくりした間合いをとって深い寝息のリズムで即興的に弾いてもらった。最終的には、土台となったリフも、もう少し展開のあったコードも、すべて削除した。結果、みぞれが降って冷え込んだあの日の我が家の台所の雰囲気だけが残った。もちろん、うちには暖炉なんてない。


07: コッホ雪片

どうやって作ったか憶い出せない。とにかく冬のサウンドスケープ素材を、これもmax/mspで加工して作った曲、雪のイメージ。雪の結晶の自己相似形、湿気を含んだ風のない空を、重さのない白い一片が舞い降りてくる、もしくは、天高く上っていく。。。雪なのか、星なのか。人は雪になるのか、星になるのか。。 レクイエムのつもりで作りはじめたわけではなかったはずだが、結果的にそうなってしまった。

*

雑木林のシルエットが浮かび、空には気持ち悪いくらい星々がギラギラしている。ひときわ大きな星が現れ、つーっと流れる。流星群だ。里山で生まれ育ったぼくにとっては、そんな夜空は当たり前の景色だったのだが。
夏のツアー先で、ライブが終わった後みんなで寝転んで、そんな夜空を見た。たのしい想い出だ。 あるいはまた、ちょうどこのアルバム制作中の2012年の年明けに、益子に息抜きに出かけた。B氏と久しぶりにゆっくり語らって楽しい夕べを過ごした。夜空に雑木林のシルエットが浮かび、オリオン座がきれいに見えた。
環境と呼応しながら音を紡ぐ。そんな振る舞いに、フォークロアをみる。いつしかタイトルは『雑木林と流星群』ということでアイデアが固まっていった。
































































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by hofli_works | 2012-11-20 11:19 | hofliの作品
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