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ラジオゾンデ『sanctuary』

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気象観測気球から眺めた 音の風景画。
STARNET ZONEをはじめ、場の気配との対話によって紡がれた
九篇の演奏を収録。

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タイトル:sanctuary
アーティスト:ラジオゾンデ
企画販売:STARNET MUZIK
販売日:2009年3月30日
定価:¥2,500(税込み)
品番:ZN-1119
フォーマット:CD
STARNET MUZIK 作品紹介ページ  試聴可!

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ラジオゾンデは、日に2回放たれる。
湿度や気圧を測りながら上昇。
約30kmの高さで気球は破裂し、
観測器はパラシュートをひらいて、地上に降りてくる。

空の上のラジオゾンデは、静寂の中にいる。
空気とともに動くので風は感じない。
動いているのは自分ではなく、世界の方だ。

ラジオゾンデの行く先は決まっていない。
偏西風にのって海へ向かうものが多いが、
最初に放たれた、もとの場所に戻ってくることもある。

ラジオゾンデ(気象観測気球)について書いていたら、
そのままラジオゾンデの話になった。
これは彼らの、
彼らと環境の合奏による、ファーストアルバムです。

──西村佳哲(リビングワールド)

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制作ノート

作品としては、これが実質上、ラジオゾンデのファースト・アルバムとなる。

レコーディング・セッションは、2008年9月8日、益子・STARNET ZONEにて、また11月17日18日の二日間にわたり東京目白・自由学園明日館にて、行なわれた。基本的にマイキングは津田によって、その他のセッティングやレコーダーの操作もラジオゾンデ自身の手によって行なわれている。レコーディング・スタジオの密室ではなく、外部の音や空気が入る空間でのセルフ・レコーディングである。

このアルバムは、即興的な演奏をハードディスク上での波形編集によって構成する、という手法で作られている。ただしカットアップ/リミックスではなく、演奏自体が持つ時間感覚にそって、原形に近い形で編集している。また、ほぼすべての音は空気を介して録音されている。ラインで録音した曲も、おおまかに編集したのち再びアンプから音を出し、マイクを立てて、その場のアンビエンスと共に録音しなおしてある。プラグインのエフェクトは施さず、各音像の、とりわけリバーブと呼ぶべき空間的ニュアンスは、オン・マイクとオフ・マイクのミックスバランスで表現している。したがって、よく聴くと、どのトラックにもその場の気配や記憶が漂っている。

こうした愚直とも言える方法論をとった理由は、ラジオゾンデの音楽が日付けと場所に基づいて演奏されたものである、ということの証しでもある。ミックスは、2008年12月から2009年1月にかけて津田の自室にて行なわれた。


1. air
STARNET MUZIK SOUND FESTAにおけるライブの翌日、9月8日。まだ蒸し暑くはあるが、その夜を境に確実に秋が訪れたSTARNET ZONEにて録音。空間中央に4本のコンデンサ・マイクを上方を向けて逆四角錐状にセッティングし、その周囲を廻りながら、クロマ・ハープとベルを演奏した。ヘッドホンで聴くと音が頭の周囲をゆっくり旋回するのがわかる。「気流の鳴る音」のイメージである。

2. swallow
即興演奏だが、青木の点描的なギターと、津田のハーモニクスによるドローンという、ライブでもよく演奏する場面である。ラジオゾンデには楽譜はないが、奏法のみ記した構成表を作ることもある。これも「点描/ハーモニクスのドローン」とだけ書かれている。明日館にて録音、バックにヒヨドリの声がかすかに聴こえるが、タイトルは「swallow」。音の印象からツバメの飛翔の軌跡をイメージしながらミックスした。

3. sign from the north
明日館にて、あらかじめ想定した全メニューを録音し終えたのち、青木がガットギターを弾き始た。それに津田が応える形ではじまった即興セッションである。この日、北から渡ってきた何種類もの冬鳥が季節の変わり目を告げていた。互いに探りながら20分近く演奏したものをエディットして構成。独奏ではじまったガットギターの訥々とした爪弾きが徐々にオフマイクの音に溶け入り、やがてオン・マイクで拾ったエレクトリック・ギターの弓奏ドローンに飲み込まれる。マイキングによる音像の違いを活かしてモンタージュを試みた。

4. floating over the forest
津田による、ギターの弦を自作マレットでスクラッチする奏法ではじまり、青木がアルペジオでそれに応える。これも即興的な展開の演奏であるが、ほぼセッションのすべてを収録。扉も窓もすべて開け放った状態のSTARNET ZONEで環境音ごと録音されており、バックに蝉時雨が聴こえる。その向こうの、益子の森の上に浮かぶ気象観測気球を幻視。静謐さとは、必ずしも音量や音数の問題ではない。

5. noon
タイトルどおり、正午ごろSTARNET ZONEにて収録。4.と同様、同条件での即興演奏である。蝉時雨の凪のような時間がふいに訪れ、その空気感を活かすべく、オフマイクを大きめにミックスした。そのときの記憶のせいか、陽の翳りや気温・湿度も思い浮かべることができるが、録音時の状況を知らないリスナーにとってはどんなふうに感じられるのだろうか。

6. conifer
ライブで何度か演奏し、曲としての体裁ができている。STARNETにて演奏された青木のアコースティック・ギターと津田の弓奏をベーシックに、青木のコーラス・フレーズとスライド・ギターを重ねた。これらは普段はサンプリング・ディレイを使ってリアルタイムで重ねているが、今回は青木はアンプを通さず生で弾いており、別録したものを重ねた。スライド・ギターは津田がのちにトリートメントを施し、ラップスチール・ギターのような音色になっている。音の隙間に聴こえるのはヤマガラのさえずりである。

7. sparrow
明日館にて録音した即興演奏。ささやくような二本のギターによる中心のない音粒が、メジャーとマイナーのコード感の合間をどこにも行かずに漂う。これも互いに探りながら15分くらい演奏したものをエディットした。大きな展開のない、たゆたうような演奏のうち、収録したのは全体の中程の部分である。ツバメの飛翔に対して、スズメの群れが雲のように伸びちぢみしながら空を舞う姿を連想した。

8. moon
陽の落ちたSTARNET ZONEにて録音。ロング・ディレイによるギターの反復が、旋回しながらゆるやかに変化し続け、蒼い月夜に森を散歩しながら思索するように、ルナティックに盛り上がってゆく。25分にも及んだ即興演奏から抜粋。後半、Ebowによるロング・トーンが聴こえる。バックで鳴くコオロギの声が漆喰の壁に反響しており、それも含めて音響として構成。映画におけるワンシーン・ワンショットのような15分近い長尺である。

9. flight in the stellar
ライブのエンディングでよくやっていた曲。いくつかの展開パターンがあるうち、うまくいった演奏の構成を明日館にて再現した。2テイク録音したが、演奏のまとまりよりも冴えを重視して、結果的にテイク1を採用。津田がハーモニクスのパートをさらに重ね、音響工作的なトリートメントを施している。星空のなかを上昇する気象観測気球のイメージである。



























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by hofli_works | 2010-11-23 10:58 | ラジオゾンデの作品
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